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100円を巡るドラマ

井の頭線で渋谷に向かう車中での話。

明大前から電車に乗り込んだ僕はギターを肩から降ろし一息ついた。
乗車率75%ほどのほどほどに混み合った車内はランチタイム前だったせいかみんなおとなしく静かだった。

ふと床を見ると銀色に光る物体が目に付いた。

100円硬貨だった。

誰かが落としたのか?いやでも硬貨のような固い物が落ちたような音は聞こえなかった。これだけ静まり返った車内なのだからそんな耳につく音を聞き逃すはずはない。

ということは僕が乗車する前からそこにあったと考えて問題ないだろう。

拾おうと思った。

しかし、体が動かない。
え?どうしたんだ?なんで拾わないんだ?何食わぬ顔をして拾ってポケットにしまってしまえばそれでこのドラマは終結を迎える。

できなかった。
おそらく10代の頃の僕だったらなんの躊躇もなく拾い上げていたにちがいない。

体が動かなかった理由を自分なりに分析してみた。
・100円という価値に魅力を感じなくなった
・自分のものでない100円を拾う事に羞恥心を覚えた
・拾ってポケットにいれた瞬間誰かから咎められると思った

車内に誰もいなかったとしたら、きっと拾っていたに違いないから1番目の理由はたぶんないだろう。

拾おうと思った瞬間にいろんな事が脳裏をよぎったのだ。

拾った瞬間にヘルメットをかぶって看板をもったリポーターがでてきやしないか?斉藤さんのような人が周りにいたらどうしようか?ポケットにいれた瞬間、前にいた高校生が「それ僕のですけど・・」と言い出さないか?

などなど。

結局、渋谷に到着するまで100円硬貨はそのまま誰からも拾われず放置されていた。

乗客が一斉に降りるどさくさに紛れて拾ってしまおうかと思っていたら、前にいた高校生が何食わぬ顔をして拾い上げ自分のポケットにしまってしまった。。。

妙に後味が悪い物語でした。。。

ちなみに100円を拾って周りの人に落としてないか尋ねたり、交番に届けるといった正義の選択肢を思いつかなかったことは反省している。

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